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人生脱力して横認識

オタクがmcバトルにハマる一部始終

お疲れ様です。くすすとりです。

先行8小節1ターン:オタクの自分は、いかにしてmcバトルにハマったのか?

突然ですが、mcバトル、好きですか?

実際に自分と会ったことのある方はご存知かと思うのですが、自分は紛うことなき"オタク"で"陰の者"です。

また、これもご存知の方は多いかと思いますが、"フリースタイルmcバトル"、マイクを通してdisり合うアレに現在進行形でハマっています。

mcバトルは、mcが自分自身のラップスキルを誇示し、どちらが優れたラッパーであるかを争うバトルです。(余談なのですが、一般的に想像される"disり"は、相手のラッパーの欠点について指摘することで自分が相対的に優れたラッパーであることを誇示するための行為です。決して悪口を言うことが目的ではないのです…)

世間一般が持つhiphopのイメージは、比較的怖いお兄さん・お姉さんがメインのターゲット層であり、陰側に位置する自分はスコープから大きく外れているように見えます。そんな自分がmcバトルに魅力を感じ、時間さえあればYouTubeでmcバトルの動画をチェックする"ヘッズ"になった背景には、自分が今までインターネットに入り浸り、好んで摂取してきた少年漫画や音楽ゲームにも似た、自分のようなオタクに刺さる魅力が存在していました。今回、1人のオタクがmcバトルという沼にハマった過程をまとめることで、今現在ブームの中にあるmcバトルの魅力を啓蒙すべく、筆を取りました。

bring the beat!

後攻8小節1ターン:入り口は、R指定の伝説的ライミング

自分がmcバトルに魅せられたのは"フリースタイルダンジョン"で放送されたとある一戦をabema TVで鑑賞したことに端を発します。

"フリースタイルダンジョン"は、テレビ朝日やabema TVで現在も放送されているmcバトルの番組で、字幕による表現など、キャッチーでわかりやすい演出によって"高校生ラップ選手権"と並びmcバトルブームの火付け役となった番組です。

フリースタイルダンジョンはシーンで知名度・実力を評価されているラッパーを"モンスター"として起用し、"チャレンジャー"である日本各地のラッパーが4人のモンスターを倒してダンジョンを制覇するべく、モンスターに挑戦していくというのが基本的な構図です。その中で、チャレンジャーとして3人のモンスターを破った実力派mc・呂布カルマと、登場最強モンスターの呼び声も高かったモンスター・R-指定の対戦における伝説的なワンバースを見たことで、自分はmcバトルに魅せられることになりました。(https://zattoubeat.com/fsd-ryohu-rshitei/)

見た目だけ格好つけた 的場浩司 でもハートはチキン 名古屋コーチン FAKE 佐村河内 Shall we 死のダンス 役所広司

先行であるR-指定のこのワンバースは、各文節で韻を踏みながら、それまでの対話に綺麗にオチをつけるものであり、ヒップホップを全く知らない自分であってもこのワンバースの完成度が異常であることがわかりました。自分は1年半ほどmcバトルシーンを追っていますが、後攻の呂布カルマのアンサーも含め、今だにこのバースを聴いた時の衝撃を超えるバースはありません。

偶然この試合を見るまで、mcバトルは粗暴で短絡的なものであり、無秩序に相手に暴言を吐くだけのものであると思い込んでいましたが、その考えに反し実態のmcバトルは非常にインテリジェンスに溢れた競技であることを知りました。自分が優れたmcであることを証明するため、完全な即興によって自分の長所をアピールし、相手の欠点を指摘することは非常に困難に見えます。ましてや、リズムと押韻の制約の中でそれらを話すのは常人には為し得ない行為に感じられ、それらを容易くこなすラッパーの姿に強い魅力を感じたことでmcバトルを追いかけるようになりました。

自分はオタクなのでTwitterが好きなのですが、その理由は各個人の考えを140文字の制約に落とし込む過程でその人が本当に伝えたい点がフォーカスされる傾向にあるからなのかな?とおもっています。140文字の制約の中であるからこそ各種パワーワードが生まれるのだと思っているのですが、mcバトルにおける各mcの話す言葉にも同様の傾向があると思っていて、即興で、短い時間の中で相手に考えを伝えなければならないという制約の下で生まれる言葉こそが、その人が普段から考えている本質的なフレーズだったりするのではないか、なんて言ってみたりします。

先行8小節2ターン:観続けることで気づいた、ヒップホップの音楽的気持ちよさ

mcバトルを見始めるようになって、最初に興味を持ったのはラッパーが何を言葉にするのか?と言う部分でしたが、観続ける中で、ビートに対してどのように言葉をハメていくのか?の観点、フローに関して強い関心を持つようになりました。

例えば、最近流行しているビートのカテゴリにTRAPと言われるジャンルのものがあります。このジャンルは旧来のビートと比べて比較的ゆっくりとしたbpmであることが多く、普通にラップすると一言一言の間隔がかなり広くなるのですが、それぞれのラッパーがあえてビートの倍の速さで話したり、三連符の音の取り方で話したりといった乗せ方をするケースがあり、それが超絶にかっこいいです。

フローに関してはそれぞれのラッパーの人間性能に依存する部分が大きく、リズムの取り方や早口の詰め込み方で他者には真似が困難なフローを武器とするラッパーも存在します。それらのラッパーのバトルはまるで音源であるかのような聴き心地で、気付くと繰り返し鑑賞してしまうような魅力があります。

たとえ同じビートであっても誰がフローするかによって全く違う聞こえ方をする点は、mcバトルを鑑賞する人間に常に新鮮さを与えます。結果として、YouTubeで鑑賞できるバトルの動画を矢継ぎ早にザッピングしてしまうことがあるほどに、魅力的なコンテンツになっているとだと考えています。

後攻8小節2ターン:mcバトルは"群雄劇"

そんな魅力的なコンテンツであるmcバトルは現在空前のブームにあり、"UMB" "KOK" "戦極" “凱旋"等の大会が定期的に開催されています。そこでは多くの場合トーナメント形式によって非常に高額な賞金を奪い合うmcの姿を見ることができます。大抵の有名なmcについて名前を覚えたくらいのタイミングで大会についても追いかけるようになったのですが、mcバトルの大会はまるで少年漫画のようにアツいコンテンツであることを知り、一層mcバトルの魅力にのめり込むようになりました。

ラッパーの能力はさまざまな観点から切り取ることができ、"ライミング" "フロー" "対話能力" "熱量" など、それぞれのラッパーにスタイルとなり得る要素が存在します。そんなmc同士のバトルとなるので、得てしてそれぞれが持つスタイルで殴り合うような展開(スタイルウォーズ)になりやすく、勝敗を決めることがあまりに悩ましい試合が数多く存在します。 例えば、戦極二十章という大会ひとつでも、"韻"に特化した"韻マン"と"対話"に特化した"gomess"のカードや、"若手最強"と目される"authority"と"フリースタイルダンジョンの現役モンスター"の"呂布カルマ"の対戦など、蓋を開けるまでどちらが勝つか全く予想できないような対戦が組まれます。

mcバトルの大会がどのようなイベントであるかをラッパーの目線から切り取った素晴らしい記事があるのでご紹介します。

https://www.google.com/amp/s/kai-you.net/amp/article/35232

ハハノシキュウという実力あるmcの、かなり読み応えのある記事となっているのですが、この記事における"mcバトルは群雄劇である"という一文に激しく心を打たれました。 実力者であってもあっさりと破れ、無名のラッパーでもかますことのできるmcバトルのトーナメントでは、エントリーした誰もがその日の主役になりえる可能性を持っているのです。 まるで良質な少年漫画のように、バックボーンを持った数多くのラッパーからその夜1番強かったラッパーを決定するイベントなので、どう考えてもアツくないわけがないんですよね。

おわりに

てな感じで、mcバトルの

  • 言葉の格闘技としての側面に魅力を感じ

  • 何度聴いても聞き飽きない音楽として鑑賞が習慣化し

  • トーナメントシーンのワクワク感で大会を追いかけるようになった

流れでmcバトルにハマりました。 自分のようなナードが怖そうな音楽を聴いていることに違和感を感じていた方もいるかもしれませんが、この記事がmcバトルが普遍的な魅力のあるコンテンツであることを伝えられるものであれば幸いです。